佐賀県地域づくりネットワーク協議会(事務局:佐賀県CSO推進機構)は、2026年3月14日(土)、佐賀商工ビル7階の大会議室およびオンラインのハイブリッド形式にて「人とまちをつなぐプロジェクト2026 自発の地域づくり〜地域おこし協力隊を知ろう!つながろう!いかそう!~」を開催しました。
当日は、地域づくりに熱心に取り組むCSO(市民社会組織)関係者や自治体職員、そして一般の参加者の皆様が会場とオンラインに集いました。地域おこし協力隊の現状と課題、そして地域と隊員がどのように協働して未来を創り上げていくべきかについて、深い学びと対話の時間を共有しました。
本記事では、当日の熱気あふれるプログラムの様子をご報告いたします。当日ご参加いただいた皆様はもちろん、ご関心がありながらもご都合により参加いただけなかった皆様にも、この熱量と地域づくりのヒントをお届けできれば幸いです。


協働のきっかけを創り出す
開会のご挨拶|協議会会長・吉原俊樹
プログラムの冒頭、佐賀県地域づくりネットワーク協議会の吉原俊樹会長より開会の挨拶が行われました。

吉原会長は、神埼市で本業を営みながら、20年近く中間支援組織「CSOかんざき」などの地域活動に関わってきた経験を振り返りました。
その中で「地域おこし協力隊と接する機会が意外と少ない」という現状に触れ、「本日は協力隊を知り、関わり、一緒に地域を盛り上げるための良いきっかけの場にしたい」と、本プロジェクトへの熱い期待を語りました。
地域おこし協力隊とは?
情報提供|佐賀県庁・高添幸博氏による解説と「三方よし」の制度理解
続いて、佐賀県さが創生推進課の高添幸博氏より、「地域おこし協力隊とは?」と題した情報提供が行われました。

高添氏は、地域おこし協力隊制度の核心を「三方よし(隊員の自己実現、地域の活性化、自治体の課題解決)」という言葉で表現しました。すなわち、隊員にとっては「自身の才能や能力を活かし、理想とする暮らしを追求できること」、地域にとっては「よそ者・若者の斬新な視点と行動力から刺激を受け、地域が活性化すること」、そして自治体にとっては「従来の行政では難しかった柔軟な地域おこし策が実現し、住民増加につながること」です。
現在、全国で約8,000人の隊員が活動しており、佐賀県内でも40名(2026年3月時点)の隊員が活躍しています。佐賀県では「自発の地域づくり」を掲げており、隊員は地域課題を魔法のように解決するスーパーマンとしてではなく、地域住民と共に考え、共に汗を流す「大切なパートナー」として位置づけられています。
高添氏は「隊員を入れて終わりではなく、入れてからがスタート」と強調し、地域と行政、そして隊員が三位一体となって走っていく重要性を訴えました。


未来を共に創るために
基調講演|SCN代表・門脇恵氏による協働への提言
地域・自治体・隊員の歩み寄りで成り立つ「三方よし」
一般社団法人佐賀県地域おこし協力隊ネットワーク(SCN)代表理事の門脇恵氏からは、「地域おこし協力隊と協働する未来の地域づくり」をテーマに基調講演が行われました。

門脇氏はまず、地域おこし協力隊という制度は「隊員、受け入れ先の地域、そして自治体の三者が歩み寄り、協働することで初めて成り立つ『三方よし』の制度である」と定義し、自身のリアルな体験談を交えながら語りました。
「ふんわりミッション」からの脱却と三者での合意形成
門脇氏自身も、地方での山暮らしに憧れ、2014年に埼玉県から佐賀市富士町へIターン移住し、地域おこし協力隊として活動した経験の持ち主です。
当時のミッションは「林業振興」で、森林組合に出向して活動していましたが、募集要項に書かれていた活動内容は具体性に欠け、ふんわりとしたものでした。そのため、最初は行政、受け入れ先(森林組合)、そして自身の間に思い描く活動内容と成果のズレがあり、何をしてよいか戸惑いや悩みもあったと振り返りました。
しかし、2年目の途中で行政、森林組合、自身の三者でしっかりと会議の場を設けました。そこで「林業の分野で何でもいいからやってほしい」「定住してくれたら嬉しい」という本音を共有して合意形成を図ることで、定住に向けた活動へとシフトでき、納得のいく3年間を過ごせたというエピソードが語られました。


卒業後の進路は「多業兼業」と地域からの声かけがカギ
任期終了後の進路については、週末に自分のビジネスを行いながら平日はパートに出るなど、「多業兼業(マルチワーク)」を選ぶ隊員が多い現状が紹介されました。

門脇氏自身も、当初は地元カフェでアルバイトをしながら林業関連の起業(アロマオイル抽出)を目指すも採算が合わず挫折。その後、仲間のNPO活動に合流し、県職員からの研修会運営の依頼をきっかけに現在の協力隊サポート事業(SCN)での起業に至るまで、生活が安定するのに3年かかったと明かしました。
そのため、ギリギリまで進路が決まらない隊員に対しては「焦らせず、地域の人から見て向いている仕事を勧めてあげてほしい」とアドバイス。自身も周囲からの声かけで適職に出会えた経験から、「案外自分では何に向いているのか分からないもの。思いがけない皆さんからの声かけが仕事につながることもある」と語りました。
また、卒業後の切実な悩みとして「家探し」のサポートも地域に呼びかけました。


隊員を受け入れる地域側への「3つの心構え」
さらに門脇氏は、ミスマッチを防ぎ、隊員が地域で存分に力を発揮して定着するために、受け入れる地域側の心構えとして以下の3点を示しました。
- 協力隊はスーパーマンじゃない!:都会から移住してくる隊員は、最初は地域のことが分かりません。あれもこれもとすべてを1人に丸投げするのではなく、協力しながら一緒に活動することが大切です。
- 協力隊を孤立させない!:見知らぬ土地での新しい生活や仕事、人間関係の構築は、予想以上に孤独を感じやすいものです。地域の方からの優しく温かい声かけが大きな救いになります。
- 長い目で見守る!:最初の1年間は地域に慣れるための期間と捉えることが必要です。すぐに成果を求めず、長い目で温かく見守る姿勢が、隊員の安心と活動の原動力につながります。


ワークショップと質疑応答
基調講演の後は、参加者がグループに分かれ、ここまでの学びや感想を共有するワークショップが行われました。
その後の質疑応答では、オンライン参加者から「役所系以外の人たちや現役世代とどう繋がればよいか?」という質問があがり、門脇氏から「地域のイベントの手伝いなどから接点を作るのが良い」とアドバイスがありました。


また、会場の隊員からの「ミッションが広い中でのセルフチェック方法は?」という問いには、「まずは求められた仕事で成果を出しつつ、プライベートとのバランスを取りながら挑戦の幅を広げてほしい」と回答があり、地域側と隊員側の双方向の視点が交わされる活発な時間となりました。


現役・元隊員との対話の場へ
パネリスト3名による活動報告
後半のトークセッションでは、県内各地で活動する現役および元地域おこし協力隊員3名が登壇し、それぞれのミッションや地域との関わり方について具体的な事例発表が行われました。


人が集まり、つながる場所づくり(武雄市隊員・庄司明美氏)
武内公民館でのコミュニティカフェ「タケノネ」
千葉県から武雄市武内町へ移住した庄司明美氏は、武内公民館を活用したコミュニティカフェ「タケノネ」の立ち上げについて発表しました。
「若い人が町を離れ、イベントの担い手が高齢化する中で、気軽に集まれる場所を作りたい」という背景から、週に1回、誰もがふらっと立ち寄れる居場所づくりに奔走しています。


声を集め、熱を加え、新しい想いを誕生させる
庄司氏の活動の特徴は、地域の人々の「やってみたい」や「困りごと」の声を丁寧に集め、それに“熱”を加えるプロセスです。
「同じ悩みを持つ人をつなげることで、新しい活動のタネが生まれます」と語り、カフェを通じた自然な多世代交流の様子が生き生きと伝えられました。


島ファンを増やし、応援団をつくる(唐津市隊員・椎葉陽一氏)
七つの島と島外の人をつなぐミッション
唐津市役所離島振興室に所属する椎葉陽一氏は、長崎県新上五島町での隊員経験を経て唐津市へ着任しました。
彼のミッションは、佐賀県のすべての有人離島であり、いずれも県北部の唐津市に属す「七つの島」(高島=たかしま、神集島=かしわじま、小川島=おがわしま、加唐島=かからじま、松島=まつしま、馬渡島=まだらしま、向島=むくしま)と、島外の人々をつなぎ、島を応援するコミュニティを醸成することです。


写真撮影や交流会を通じたコミュニティ醸成
前職の写真撮影業のスキルを活かし、敬老祝いの撮影会や同窓会への同行、お祭りへの密着取材など、島民の懐に飛び込む活動を実践しています。
「アイランダーへの参加協力や、交流会の開催、ゆめさが大学の島巡り同行などを通じて、着実に『島ファン』が誕生しています」と、写真や映像を交えながら魅力的に語りました。


CSOと地域をつなぐ「ご縁むすび」(元佐賀県隊員・野見山茂氏)
外部からの視点で地域の「ウチとソト」をつなぐ
元佐賀県地域おこし協力隊の野見山氏は、CSO支援や防災、まちづくりなどをテーマに県全域で活動。任期終了後も佐賀に残り、現在は一般社団法人小城市観光協会で活躍されています。
現役隊員時、佐賀市や県西エリアを中心に「CSOご縁むすび」というミッションに取り組んだ経験を共有しました。経営者目線から見たCSO活動の魅力(利他の精神)に惹かれ隊員となった経緯が語られました。


困りごとを事業として成立させる挑戦
野見山氏は「地域にも団体にも『ウチとソト』のような感覚が存在することに驚いたが、それを乗り越えるにはまず自分から変わる必要があった」と当時を振り返ります。
「誰のための活動なのかというブレない軸を持ち、CSOや企業、行政の困りごとを事業として成立させたい」という力強いビジョンは、今後の地域協働の大きなヒントとなりました。


クロストークセッション
トークセッションでは、「佐賀の良いところ」や「困ったこと」についてリアルな声が飛び交いました。
庄司氏が「方言に苦労したが、佐賀の人は温かく、よく声をかけてくれる。顔を合わせるだけで覚えてくれることが嬉しい」と語ると、椎葉氏も「区長さんをはじめ、島の人たちが率先して人をつないでくれることに感謝している」と応じました。


野見山氏は、移住の決め手となったローカル食堂のカツ丼のエピソードを交えつつ、退任後の仕事の心配までしてくれた地域の方々の温かい支えがあったからこそ、佐賀に残る決意ができたと明かしました。


連携の輪を広げる
閉会のご挨拶|佐賀県庁・吉村健一氏
プログラムの最後には、佐賀県地域づくりネットワーク協議会副会長の代理として、佐賀県さが創生推進課の吉村健一企画主幹より閉会のご挨拶がありました。

吉村主幹は「人口減少が進む中、地域を盛り上げるためにはネットワークの構築が重要」と強調。「協力隊はスーパーマンではなく、地域をなんとかしたいと移住してきた移住者の1人です。特に用事がなくてもカフェに立ち寄ったり、島に足を運んだりして、まずは繋がりを持ってほしい」と締めくくり、新たな連携の輪が広がることに期待を寄せました。
参加者の声と学びを紹介
期待とアンケートから見える協働への意欲
今回のプロジェクトには、参加申し込みの段階から地域づくりに対する非常に熱量の高い声が寄せられていました。また、イベント終了後に実施したアンケートでは、回答者の75%が「参加目的が満たされた」と答え、満足度は10段階評価で平均7.06と好評を得ました。
寄せられた「申込時の期待」や「イベント後の声」からは、地域と協力隊の連携に対する前向きな意欲や、新たな学びを得た様子がうかがえます。
参加者からの具体的なコメント
- クリークの保全に熱い想いがあり、協力隊に応募しようとしたが居住地の要件で断念した。可能なら関係者とお話できないかと考えている。
- 棚田ツアーを企画し実施している。棚田地域の歴史を取りまとめるミッションで協力隊を採用してほしい。
- 地元の地域おこし協力隊とまずつながりたい。一緒に企画を考えてみたい。
- 自身が地域おこし協力隊になる選択肢も検討しつつ、いずれにしてもつながり、連携できるようにしたい。
- 近隣の市町の人たちの活動をのぞいてみたい。
- 協力隊員の採用を考え始めた時に参加していたら意義あるイベントだったかと思いました。
- 自分の町へ再度、地域おこし協力隊に来てほしいと思っているので、現状が知れて良かった。
- 地域おこし協力隊との接点の作り方、隣の町の協力隊員と知り合えた。
これらの結果は、本プロジェクトが地域と協力隊、そして多様な主体とが新たにつながり、協働へと踏み出すための重要な一歩となったことを示しています。当日参加いただけなかった皆様も、きっと同じような地域への熱い想いをお持ちのことと思います。


アーカイブ視聴のご案内へ
見逃し配信の申し込み受付
本カンファレンスは、会場とオンラインのハイブリッドで開催され、多くの方にご参加いただきましたが、当日ご都合がつかなかった方や、もう一度内容を振り返りたい方のために、アーカイブ視聴の受付を行っております。
地域おこし協力隊の制度から、現場で奮闘する隊員たちのリアルな声、そして受け入れ側の心構えまで、これからの地域づくりのヒントが詰まった内容です。
視聴をご希望の方は、以下の参加申し込みフォームよりそのままお申し込みください。
- 申し込みフォーム:https://forms.gle/rKKFdi9kbm1KLbRN6
結びに:新たなネットワークの構築へ
佐賀県地域づくりネットワーク協議会の事務局を担う私たち「佐賀県CSO推進機構」は、地域づくりにおいて最も大切なのは、一人ひとりが依存心を払拭し、当事者意識を持ち、自発的な行動を起こすことだと考えています。

地域の課題解決に向けて新しい風を吹き込む「地域おこし協力隊」と、長年地域を支えてきた「CSO(市民社会組織)」や住民の皆様。この両者が「あそこの隊員さん、頑張ってるね」という傍観者の関係を越え、「じゃあ、一緒に何ができるだろう?」と手を取り合うことで、佐賀の地域づくりはさらに面白く、力強いものへと進化していくはずです。
私たち佐賀県CSO推進機構は、これからも地域主導の活動をサポートし、民間団体相互、そして自治体との交流を推進することで、持続可能な『自発の地域づくり』を全力で応援してまいります。本イベントにご参加いただいた皆様、ご協力いただいた全ての皆様に心より感謝申し上げます。
お問い合わせ先
佐賀県地域づくりネットワーク協議会
(事務局:特定非営利活動法人佐賀県CSO推進機構)
- 〒840-0824 佐賀市呉服元町2番24号呉服元町ビル10号
- TEL:0952-26-2378
- FAX:0952-26-2227
- E-mail:saga-chiiki@min-nano.org
- Facebook:https://fb.com/chiikinet.saga/
「佐賀県地域づくりネットワーク協議会」とは
佐賀県地域づくりネットワーク協議会は、平成6(1994)年5月1日に地域づくり団体相互の交流、地域づくり団体と自治体との交流を深め、地域づくりに関する情報提供を行うことにより、地域づくり団体の自主的・主体的な地域づくり活動を推進することを目的に設立された団体です。
平成18(2006)年から佐賀県CSO推進機構が事務局を担っています。

















