佐賀県CSO推進機構は2025年9月28日、佐賀商工ビル7階にて「法人設立20周年記念祝賀会」を開催しました。秋山翔太郎の第3代代表理事就任の日でもあり、創設者の川副知子顧問(初代代表理事)を交えて20年の歩みを振り返り、将来を展望する機会となりました。
式次第
- 開会挨拶(秋山 翔太郎|代表理事)
- 応援団体からのメッセージ
- 川﨑 まり子 様(佐賀県県民環境部県民協働課/課長)
- 岡 浩章 様(佐賀市地域振興部/副部長)
- 鈴木 登美子 様(認定特定非営利活動法人とす市民活動ネットワーク/理事)
- 岩永 幸三 様(認定特定非営利活動法人日本IDDMネットワーク/理事長)
- 川副知子顧問への記念品・花束贈呈
- 川副知子顧問による講話
- トークセッション「これからの推進機構。未来にどうつなげていくか」
- コーディネーター
- 山田 健一郎 様(公益財団法人佐賀未来創造基金/代表理事)
- 登壇者
- 秋山 翔太郎(代表理事)
- 鈴木 宣雄(副代表理事・ピカピカリンクヘルプデスク)
- 山岡 弘美(理事・みやき事務所(健康づくり支援))
- 岡野 恵美(CSO経営支援事業部/事業コーディネーター)
- 羽良 旭人(佐賀市市民活動プラザ事業部/相談支援員)
- コーディネーター
- 記念撮影
- 乾杯(赤司 久人|監事)
- 会食・交流会・箏演奏(和楽器ユニット絲(いと)様)
- 閉会挨拶(鈴木 宣雄|副代表理事)


開会挨拶
20年の歩みと謝意

当法人は「志でつながる団体から地域に根ざす自治会まで、あらゆる市民活動を包括する存在」として、「県民協働宣言」のもと、市民と行政が連携し地域課題解決に取り組んできました。
秋山新代表理事は、経営難などの困難を乗り越え20周年を迎えられたのは、川副顧問をはじめ長年の支援者のおかげだと感謝を表明しました。
新たな使命と3つの柱
秋山新代表理事は、創設者の想いを継承しつつ、新時代に適した当法人のミッションとして「翻訳者(Translator)」を提示。これは市民、企業、NPO、行政、学校など異なるセクター間の架け橋となる役割です。このミッションに基づき、事業運営の3つの柱を推進すると発表しました。
- 経営基盤の強化と持続可能な組織運営の確立:AI・ITの活用による業務改革を進め、しなやかで柔軟な組織の足腰を鍛える。
- 多様な主体との連携・共創による社会的インパクトの最大化:行政・大学・企業などセクターを超えたパートナーシップを強化し、佐賀の地域課題解決に向けた大きなうねりを創出する。
- 未来志向の事業展開と新たな価値創造への挑戦:DXを推進し、従来の延長線上にとどまらない次世代へのアプローチを強化する。かつ、未来社会の基盤づくりに挑戦する。
決意と協力の要請
最後に、秋山新代表理事は、『自立した県民が支え合う社会をつくる』という当法人の理念実現に向けて全力で取り組む決意を表明。新体制を紹介し、引き続きのご支援をお願いして挨拶を締めくくりました。


応援団体からのメッセージ
祝賀会では、佐賀県、佐賀市、とす市民活動ネットワーク、日本IDDMネットワークから心温まるメッセージをいただきました。
佐賀県県民環境部県民協働課課長 川﨑 まり子 様

川﨑課長は、県民協働の広がりに佐賀県CSO推進機構が不可欠と述べました。
2004年の「県民協働指針」は川副顧問の尽力で実現し、約7割をCSOや県民が起草。かつて馴染みのなかった「協働」が今日では一般的になったのは当法人中心のCSO活動の成果と評価しました。
また、CSOには中間支援組織による相談・助言の場が重要と指摘。県職員も当法人の助言を活用し、近年のCSOマネジメントアカデミー事業や新たな活動様式対策支援事業立案への協力に感謝を示しました。
佐賀市地域振興部副部長 岡 浩章 様

岡副部長は、当法人が指定管理者を務める佐賀市市民活動プラザについて触れました。
プラザは「市民が楽しく活動できる場」と「誰もが気軽に相談できる中間支援」の2つを使命とし、川副顧問の想いが今も息づいていると述べました。
コロナ禍後、内装改修やモニター設置により来館者数は前年比10%増と回復。市民活動応援制度「チカラット」への新規申込も例年の2〜3件から8件へ増加しており、秋山新代表理事らの相談体制充実が市民活動支援に結実していると評価。
最後に、川副顧問の志が新体制で花開いていることを喜び、当法人の更なる発展を願いました。
とす市民活動ネットワーク理事 鈴木 登美子 様

鈴木様は、当法人が川副顧問を中心に佐賀県のCSO発展に尽力したことへ敬意を表されました。
また、自身が代表を務めた「とす市民活動ネットワーク」立ち上げ時に川副顧問らから得た協力に感謝を伝えられました。
当法人が困難を乗り越えられたのは、川副顧問、野口前代表理事らの尽力によるものと称賛し、川副顧問が引き続き組織を守ることを「心強い」と評価。
野口前代表から秋山新代表への新体制に「ますます発展されることと思います」と期待を寄せられました。
日本IDDMネットワーク理事長 岩永 幸三 様

岩永様は、佐賀県のCSOの歴史は川副顧問の歴史そのものだと述べ、「県民協働指針」作成が転換点と振り返りました。
指針作成では延べ250時間の協議を重ね、約7割は川副顧問を中心としたCSOや県民が寄与。指針の「公共とはあなたです。みんなです」には「自立した市民が社会をつくる」という思いが込められていると解説。
また、山田代表理事など人材育成も川副顧問の功績と評価。秋山新代表への円滑な世代交代を称賛し、築かれた基盤を継承して社会を変える活動が「最高の恩返し」になると述べました。
川副顧問には今後も指導力を発揮してほしいと期待を表明しました。
川副顧問への記念品・花束贈呈
川副顧問に対し、秋山新代表理事が功労金を、野口前代表理事が花束を贈呈しました。野口前代表理事は、経営悪化という難局に直面し、給与の支払いも困難だった時期に、川副顧問からの「分かった」という一言で支援を受けた苦しい道のりを振り返りました。そして、川副顧問から「腹をくくる」という覚悟の重要性を学んだことへの深い感謝の意を表しました。


川副顧問による講話
川副顧問は、佐賀県における市民活動とCSOの発展の歴史について講演しました。
「県民協働」黎明期の立役者たち

川副顧問は、市民活動の広がりの原点として2004年に新設された「県民協働課」を挙げ、県職員の熱意によって県全体の市民活動が発展したと述べました。
同課の主要施策として「県民協働の指針」策定と中間支援組織の設立・支援を強調。また、県民協働課職員が大阪ボランティア協会や地域活性化センターに派遣され、その知見を佐賀で活かしたことへ感謝を示しました。
地域と多様な主体による協働
また、佐賀県全域で市民活動が広がった背景には、県民協働課の支援だけでなく、草創期から地道に活動を続けてきた数多くの地域団体や個人の存在があったことを紹介しました。
具体的には、
- 鳥栖や基山、神埼、小城といった各地域で中間支援組織を立ち上げ、活動した人々。
- 地域婦人会などの既存組織の協力者。
- さが環境推進センターをはじめとするNPO団体の初期の活動家。
- 後の佐賀未来創造基金につながる事業(市民コミュニティファンド)を展開した人。
- 当法人の設立や運営を陰で支えた税理士など。
このようなさまざまな分野、地域の人たちが力を合わせて市民活動を発展させた大きな流れがあったと述べ、会場の関係者に感謝の気持ちを伝えました。
市民活動の課題と行政の協力
市民活動団体の「お金がない」「地域の情報が行き届いていない」「協力体制がない」という3つの課題に対し、県民協働課は活動指針の策定や予算提供などの具体的支援を実施。「行政の協力」と「市民の熱意」の融合により、市民活動は大きく発展しました。
佐賀県の市民活動への注目は重要な転機であり、最盛期は行政も情熱的に取り組んでいた時期だったと振り返り、支援者全員への感謝の意を表しました。


トークセッション「これからの推進機構。未来にどうつなげていくか」
公益財団法人佐賀未来創造基金の山田健一郎代表理事をコーディネーターに迎え、若手職員によるトークセッションを実施しました。
山田健一郎様の挨拶と問題提起

山田様は、2009年に佐賀に戻りNPOマネジメント研修を受けた際、川副顧問から「やまけん」と呼ばれたことが市民活動の始まりだと振り返り、自身を「川副チルドレン」の一人、川副顧問を「佐賀の市民活動の母」と表現しました。
山田様は、NPO職員の「サラリーマン化」が進む現代において、働く環境は改善しつつあるものの、創設期の「無償でもがむしゃらに取り組む熱意」や「ボランタリティ」をどう次世代に継承するかが課題だと指摘。川副顧問の「核はボランティアだが、事業をしっかり行うことが重要」という教えを強調しました。
今回のセッションは、過去20年を振り返り、秋山新代表理事を含む若手が今後の20年をどう担うかを議論する場だと説明しました。


職員による「翻訳者」としての実践共有
登壇した職員からは、秋山新代表理事が提示した「翻訳者(Translator)」というキーワードを軸に、それぞれの現場での具体的な役割や、中間支援に対する考えが共有されました。
岡野 恵美(CSO経営支援事業部事業コーディネーター)
市民活動に馴染みのない企業や当法人のふるさと納税関連の生産者に、彼らが理解できる言葉で「翻訳」し、市民活動の「伝道師(エヴァンジェリスト)」としての役割を強調しました。

羽良 旭人(佐賀市市民活動プラザ事業部相談支援員)
「翻訳者や伝道師」という言葉は難しいと前置きし、中間支援の核は市民の「話を聞く」「理解する」「整理する」という3つの基本要素だと述べました。相談者の考えを整理する手助けだけで心が落ち着き次の一歩が見えることもあると、対話の重要性を強調しました。

山岡 弘美(理事兼みやき事務所責任者)
みやき町内56地区の公民館で7人のスタッフが月120回の健康教室を実施。指運動などでシニア世代の介護予防に取り組みながら、公式LINE登録などの町DX化支援と情報格差解消も担い、「住民と行政をつなぐ」現場密着型の中間支援を実践していると報告しました。

鈴木 宣雄(副代表理事兼ピカピカリンクヘルプデスク)
医療システム「ピカピカリンク」の「翻訳者」として活動し、防災士として佐賀災害支援プラットフォーム(SPF)の共同代表も務めています。災害時には行政・社協・企業・市民活動団体の四者をつなぐ「クワッドリンク」を推進し、医療と防災の両面で多様な主体を「つなぐ」役割を担っていると説明しました。



創設者・川副顧問からのエール
セッションの終盤、山田氏からコメントを求められた川副顧問は、これからの当法人を担う若手職員に向けて、「前を見て、地域社会の今何が課題なのかを探すこと。それが地域で活動する団体の一番の宝物探しです。そこから自分たちの本来の活動が生まれてくる」と、力強いエールを送りました。「これからも皆さん頑張っていただきたいなと大いに期待しております」と、温かい言葉で締めくくりました。


秋山新代表理事による「立案者(プロデューサー)」としての決意

川副顧問のエールを受け、秋山新代表理事は当法人の今後の役割について語りました。現在の役割を「翻訳者(Translator)」と位置づけつつも、「20年前の我々の役割はそれだけだったか」と問いかけ、当法人の存在意義は社会に必要なものをゼロから企画・創出する「立案者(プロデューサー)」にあったと指摘しました。
その具体的な例として、
- 当時まだ佐賀市に存在しなかった「市民活動プラザ」の必要性を訴え、2001年にその前身となる活動を始めたこと
- 「健康づくり支援事業」や「ピカピカリンク」といった、今では当法人の重要な柱となっている事業を、社会のニーズを捉えて新たに創設したこと
を挙げました。
時代変化を見据え、単なる事業継続ではなく「プロデューサー」としての原点に立ち返り、新たな社会的価値を創造する事業立案に挑戦すると表明しました。
最後に、「自立した県民が支え合う社会が実現したら、当法人はもう必要ない未来を目指す」という究極の目標を掲げ、セッションを締めくくりました。


交流会と閉会挨拶
祝賀会は赤司久人監事の乾杯発声で始まり、和楽器ユニット絲(いと)の箏演奏とともに和やかに進行しました。


閉会では鈴木宣雄副代表理事が、川副顧問から秋山新代表理事へと続く思いのバトンに感謝を表し、一本締めで祝賀会は盛会裏に終了しました。


今後の展望
佐賀県CSO推進機構は、20周年と新体制発足を機に、地域社会の課題解決と「自立した県民が支え合う社会を創る」という理念実現に向け邁進します。今後とも皆様のご指導とご協力をお願い申し上げます。

