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【活動報告】サービスグラントと佐賀県が進出協定を締結~「プロボノ」で佐賀の社会課題解決を加速~

2025年12月11日、佐賀県庁にて、認定NPO法人サービスグラント(以下、サービスグラント)、佐賀県、公益財団法人佐賀未来創造基金の三者による進出協定締結式が執り行われました。

この協定は、職業上のスキルや経験を活かして社会貢献する「プロボノ」を佐賀県内に普及させ、CSO(市民社会組織)の基盤強化を支援することを目的としています。

当日は、当法人代表理事の秋山が立ち合い、佐賀における新たな協働のスタートを見届けました。

佐賀県のCSO誘致と「プロボノ」の可能性

県内17例目の進出協定

佐賀県は2015年度より、社会課題解決に取り組むCSOを県内に誘致する事業を全国に先駆けて展開しています。サービスグラントは、この事業において17団体目の進出となります。

スキルを活かす社会貢献「プロボノ」とは

「プロボノ」という言葉は、「公共善のために」を意味するラテン語「Pro Bono Publico」を語源としています。

これは、単に時間や労働力を提供する一般的なボランティアとは一線を画します。ITスキル、デザイン、広報、事業計画、法務、経理など、社会人が普段の仕事で培った「専門的なスキル」や「経験」を持ち寄り、社会課題の解決に挑む活動です。

サービスグラントは2005年に東京で活動を開始した、日本におけるプロボノコーディネートのパイオニア的団体です。これまでに数多くのプロジェクトを組成し、ウェブサイト制作やファンドレイジング(資金調達)戦略の立案など、具体的かつ成果の見える「プロジェクト型支援」を展開してきました。

今年で活動開始20周年を迎える同法人が、九州の活動拠点として佐賀を選んだことは、地方における「新しい働き方・関わり方」のモデルケースとなる可能性を秘めています。

循環する「血液」と「人材の発掘」

山口知事「活動を循環させる『血液』のような存在に」

締結式にて、山口祥義 佐賀県知事はサービスグラントの進出を「心から感謝します」と歓迎しました。

知事は挨拶の中で、県内のCSO活動が活発化している現状を踏まえつつ、サービスグラントが果たすべき役割について、独自のメタファー(比喩)を用いて次のように表現しました。

「今、佐賀県では色々な人が活躍しています。その中で、サービスグラントはお互いの活動が円滑に進むように循環させる、まさに『血液』のような法人なのかなと思っています。
そして、その『血液』となるような人材を新しく『発掘』する役割も担っていただけるのではないかと期待しています」

佐賀の最大の特徴は「志あるチーム」

さらに知事は、佐賀県の現状について、資金面での支援を行う「佐賀未来創造基金(代表理事:山田健一郎氏)」の存在にも触れつつ、次のように強調しました。

『志(こころざし)あるチーム』が増えてきています。県内のNPOやCSOはすごく頑張っていて、そうした活動が盛んであることが、今の佐賀県の最も大きな特徴になっています。
だからこそ、皆さんが一緒になってこの活動全体を支えていただけることは、非常に心強いです」

この言葉には、単に人手が足りない穴を埋めるのではなく、外部の知見が入り込むことで組織の新陳代謝を促し、活性化させてほしいという強い期待が込められています。

岡本共同代表「人材育成こそが鍵」

これを受け、サービスグラントの岡本祥公子共同代表は、「佐賀県のCSO支援体制は、全国的に見ても非常に先導的です」と評価しました。

唐津市厳木町に事務所を設置し、佐賀市市民活動プラザを拠点として活動することを報告。「この佐賀を拠点に、改めて都市圏外での支援を広げ、九州全体へ展開していきたい」と力強い抱負を述べました。

歓談の際、岡本代表が活動方針として、「CSOの悩みに伴走して課題整理ができるような人を育てていく『人材育成』」の重要性を説くと、山口知事も「すごいね。でも結局は『人』だもんな。人材育成は大事だよね」と深く頷き、共感を示しました。

佐賀における推進体制と「さがボノ」

経験者が牽引する「さがボノ」の発足

この展開を現場で支えるため、サービスグラント九州特任の横道亨氏らと協働し、プロボノ推進チーム「さがボノ」を発足させました。

「さがボノ」は、個人、企業、行政、学校、金融機関など、あらゆるセクターが立場を超えて協働する社会の実現を目指すローカルチームです。

さがボノ定例会

厳木(きゅうらぎ)から始まった循環

今回の進出の背景には、象徴的なストーリーがあります。サービスグラント九州特任の横道亨氏の原体験です。

横道氏はかつて、唐津市厳木町で集落支援員として活動していました。地域課題の解決に奔走していた当時、彼は自らサービスグラントに申請し、プロボノによる情報発信支援を「受ける側(受援者)」として経験しています。

「当時、外部のプロボノワーカーの方々に助けてもらった経験が、今の自分の原点です。支援を受ける側だった私が、今度はその仕組みを広げる側に回る。この『循環』こそがプロボノの醍醐味であり、佐賀の地方にこそ必要な仕組みだと確信しています」

一度支援を受けた当事者が、その価値を確信して普及側に回る。このストーリーこそが、佐賀県が目指す「人材と想いの循環」を体現しています。経験者が推進役となることで、より地域の実情に即した、地に足の着いた普及が期待されます。

ノルディックウォーキングSALCのケース

式典後の新聞記者の取材に、佐賀県内でプロボノを活用している「ノルディックウォーキングSALC」代表の松尾氏が駆けつけました。松尾氏は、プロボノマッチングプラットフォーム「GRANT(グラント)」のヘビーユーザーでもあります。

松尾氏は当初、「イベントのチラシを作ってほしい」という具体的な制作要望を持っていました。しかし、マッチングしたプロボノワーカーからの提案は意外なものでした。

「チラシを作る前に、まずは広報戦略そのものを一緒に勉強しましょう」

この提案を受け入れた結果、プロジェクトは単なるチラシ作成に留まりませんでした。ブログの情報整理、ターゲット設定の見直し、広報の基礎学習に重点が置かれ、結果として団体自身の「発信力・企画力」そのものが底上げされるという成果を得ました。

これこそが、プロボノがもたらす組織力強化(キャパシティ・ビルディング)の好例です。

今後の展開

協定締結記念 連続講座の開催

このモメンタム(機運)を逃さず、具体的なアクションにつなげるため、佐賀市市民活動プラザにてプロボノの普及と定着を加速させるための連続講座を企画します。

第1回|社会課題別講座「先を読む」
越境学習と社会参加の最新潮流~プロボノが結ぶ佐賀の課題と全国のスキル~
  • 日時:2026年1月16日(金)19:00~21:00
  • 会場:佐賀市市民活動プラザ(佐賀商工ビル7階)
  • 講師:岡本 祥公子 氏(サービスグラント/共同代表)
  • 内容
    • プロボノ(専門スキルでの社会貢献)の基本的な概念と、企業で求められる「社会感度」や「共創力」を高める人材育成(越境体験)としての価値を紹介します。
    • 全国のプロボノワーカーのスキルで佐賀のCSOの課題を解決し、地域課題解決力を高める可能性を探ります 。
第2回|組織力強化研修「つかむ力」
プロボノ活用のはじめの一歩~”想い”を”プロジェクト”へ。今から始める仲間集め~
  • 日時:2026年1月30日(金)19:00~21:00
  • 会場:佐賀市市民活動プラザ(佐賀商工ビル7階)
  • 講師:横道 亨 氏 (サービスグラント/九州特任)
  • 協力:プロボノ推進チーム「さがボノ」
  • 内容
    • プロボノ受け入れを具体的に検討する団体向けに開催します。
    • マッチングプラットフォーム「GRANTの具体的な活用法を習得し、自団体の課題をプロボノに依頼できる具体的な「プロジェクト」へ言語化・具体化するワークショップを行います 。具体的な活用法をデモンストレーション形式で解説します。

結びに

佐賀県CSO推進機構は、この協定を新たなスタートラインとし、県内の中間支援組織と連携を深めながら、プロボノを通じた地域社会の課題解決と、「自立した市民社会」の実現を積極的に推進してまいります。

お問い合わせ
さがボノ

(事務局:交流スペース 彩り


特定非営利活動法人佐賀県CSO推進機構

(CSO経営支援事業部)

CSO経営支援事業部
About the author

佐賀県内のCSOを主な対象とし、経営力向上を図るため情報の受発信の支援やスキルアップ講座を開催しています。また、オンライン配信やデジタル技術活用などこれまで培ったスキルを活かし、オンラインを活用した情報保障支援(オンラインCSO支援事業)を行っています。

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