妻の妹が鍋島緞通を購入したらしい。自宅用に玄関マットと、それと座布団を2枚。
それがどれだけ素晴らしいものだったかというのを散々妻から聞かされたその週の休日、私は妻とともに佐賀城の堀の畔にある「鍋島緞通吉島家」にいた。いかんせん妻は行動を起こすのが早い。
鍋島緞通――江戸時代に、今のこの佐賀県は佐賀市内で成立した毛足の長い綿織物だという知識はあった。けれども、歴史のある洋風建築などに敷かれているもので、自宅で使うという発想は正直なところまったくなかった。それは妻も一緒だったと思う。
だが、実際に使われている様子を見てきた妻は「我が意を得たり」となったようだ。2階のショールームにお邪魔して、なかを見渡すなり「ほら! あれ!」と一角を指し示した。
そこにあったのは、タペストリのように壁に掛けられている鍋島緞通よりもひと回りかふた回り小さな鍋島緞通。確かにこれならばマンションの玄関にも置ける。
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縮尺こそ違うが、ちゃんと大判と同じ柄だ。高級感と、ミニチュアが愛らしく感じるような、あのくすぐったさが同居している。
これはよくない。とても欲しくなる。よくない、よくないな。とてもよくない……。
逃げるように妻の方を見る。目が合う。「見て」と掲げて見せてきたのは、手織りの証拠となるという房のついた座布団だった。「ほら、すっごくきれいな黄色! ほらこれ、毛足が長くて! 緞通の伝統的な文様を抜き出した柄なんですって!」
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きらきらという擬音がつきそうな笑顔の妻に曖昧に笑って見せて、私はゆっくり天井を仰いだ。
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古賀 隆(こが たかし)
1957年(昭和32年)佐賀県生まれ。民間企業を定年後、帰郷。
趣味は地域探索、そして、ちょっと良いもの探し。
鍋島緞通吉島家の返礼品
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NEO鍋島緞通 牡丹花菱文縁雷文 黄支子地(70×120cm)
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NEO鍋島緞通 牡丹花菱文縁雷文 黄支子地(60×90cm)
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手織鍋島緞通 蟹牡丹文中心柄 茜地(45×45cm)
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手織鍋島緞通 蟹牡丹中心柄 黄支子地(45×45cm)
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NEO鍋島緞通 雷文繋ぎ(45×45cm)
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NEO鍋島緞通 花菱(30×30cm)