白いきくらげの存在は知っていた。佐賀県唐津市は七山で栽培されているというのも小耳に挟んだことはあった。
よく見かける黒い色をしたきくらげ(アラゲキクラゲというらしい)の突然変異種で、シロキクラゲとは別種らしい――というのは今、ネットで調べて知った。
目の前に「松浦漬」がある。鯨の軟骨を酒粕に漬けた唐津市は呼子、「松浦漬本舗」の銘産品だ。好物だ。甘めに調味された酒粕が美味い。軟骨のこりこりが美味い。
だが、今、目の前にある「松浦漬」は、軟骨に代わって七山で生産されたグレイスファームの白いきくらげ「白美茸」がこりこりしている。
はっきり言おう、問題無し。白いきくらげ、美味いな。
プレーンと、葉わさび入り。前者はまろやか、後者はちょっぴりぴりりとして甲乙つけがたい。辛いものが苦手な向きでも、この葉わさび入りならばいけるだろう。よってこの二つは好みの問題だな。
なお、松浦漬については飯の供だという向きもあるが、私は酒の供だと考える。
なので、小城の酒屋・酒舗 彩の青年店主、中尾さんに選んでもらった七田 純米吟醸と岩の蔵 純米吟醸を松浦漬で呑む。
七田はさっぱりと、岩の蔵はくるみこむように、甘い粕と白いきくらげのこりこりを臓腑に流し落としてくれる。
ちなみにうつわも酒器も唐津焼。唐津市は浜玉の菅ノ谷窯さんの作品だ。
白いきくらげの松浦漬を食べながら、皮鯨のぐい呑みで酒を呑む。とても素敵じゃあないか。
のみすぎないでよー、ぜったいめちゃめゃのんでいるでしょー、と遠くから妻の声がする。
たまにはいいだろう、と喉の奥で笑うに留めて、白いきくらげをこりこりさせて、ぐいっと酒を呷る。
ああ、幸せだな。
古賀 隆(こが たかし)
1957年(昭和32年)佐賀県生まれ。民間企業を定年後、帰郷。
趣味は地域探索、そして、ちょっと良いもの探し。