認定NPO法人サービスグラントは、専門的なスキルを活かした社会貢献活動「プロボノ」を全国に広げる取り組みを進めています。その一環として、佐賀県内では佐賀県CSO推進機構と協働し、プロボノに関心を持つ個人や団体によるチーム「さがボノ」を発足。県内の市民活動の現状やニーズを把握し、プロボノという新たな協働の形を提案するため、県内の中間支援組織を巡る「中間支援組織キャラバン」を実施しています。
今回はその一環として、2025年8月21日(木)、サービスグラント九州特任の横道亨さんが、「さがボノ」のチームメンバーでもある当法人副代表理事の秋山翔太郎と共に、小城市市民活動センター「おぎぽーと」を訪問。センター長の圓城寺真理子さん、職員の深町和美さんと情報交換を行いました。


地域のつながりから始まった対話

情報交換は、和やかな自己紹介から始まりました。横道さんが以前、唐津市厳木町で集落支援員として活動していたことを話すと、多久市出身の圓城寺センター長も「厳木には友人が多いんです」と応じ、ローカルトークに花が咲きました。
圓城寺センター長が厳木町の「瀬戸木場(せとこば)」といった具体的な地名を挙げると話が弾み、さらに娘さんが最近厳木町でのスケッチ大会に参加し、そのまち並みの魅力に親子で惹かれていたというエピソードも披露されました。偶然のつながりから打ち解けた雰囲気で本題に入りました。
プロボノと「GRANT」—専門スキルを地域のために
今回の訪問の主なテーマは、ビジネスパーソンなどが業務で培った専門知識やスキルを活かして行う社会貢献活動「プロボノ」です。
横道さんは、ご自身もプロボノの支援を受けた経験者です。集落支援員時代、自ら運営する「交流スペース 彩り」の情報発信に悩んでいた際に、サービスグラントが運営するプラットフォーム「GRANT」を知り、支援を募集。すると、東京の大手広告代理店に勤務する方がプロボノワーカーとして手を挙げ、実際に2度も厳木町に滞在しながら、無償で情報発信を手伝ってくれたという実体験を語られました。
「GRANT」は、ウェブサイト制作、デザイン、IT、会計、マーケティングなど、多岐にわたる分野の専門スキルを持つ約1万人のプロボノワーカー(ボランティア)が登録しており、支援を必要とする団体とオンラインでマッチング支援する仕組みです。プロボノワーカーの多くは企業に勤めながら、スキルアップや社会とのつながりを求めて参加しています。


佐賀県内の活用事例と持続性
「GRANT」の活用方法は様々です。「さがボノ」に掲載されている県内事例として、以下が紹介されました。
- SNS運用サポート:SNS上での広報活動(かしまこどもフェス実行委員会)
- 鹿島市の「こどもフェス」で、イベントのInstagram投稿をプロボノワーカーが代行。
- ウェブサイト制作:フードバンク事業に関連したホームページの立ち上げ(NPO法人 KARATSU)
- フードバンクからつの公式ホームページを制作。
- パンフレット制作:活動紹介パンフレットのデザイン作成(NPO法人 WeD)
- 唐津市で高校生の活動を応援するWeDの活動紹介パンフレットをデザイン。
圓城寺センター長から「サービスグラントはどのように運営されているのか」という質問に対し、行政からの委託事業や、企業の社員研修プログラムとしてのプロボノ事業が主な財源となっていることが説明されました。これにより、NPOや市民団体は無料で「GRANT」を利用でき、スキルある市民と地域課題をつなぐエコシステムを実現しています。


おぎぽーとが抱える課題とプロボノ活用の可能性

圓城寺センター長は、おぎぽーとに登録する約50団体が直面する課題を率直に共有しました。資金調達の難しさ、高齢化するメンバー構成、そして活動の社会的認知を広げるための情報発信が団体運営における大きな壁となっています。
「やる気はすごくあるんですけど、くすぶってあるところがあるんです」という言葉は、地域市民活動の現場が抱える潜在的な可能性と、同時に存在する停滞感を端的に表現しています。
デジタル技術の活用においても課題は顕著です。QRコードの導入など、一部のIT技術の普及は進んでいるものの、オンライン会議やリモートの共同作業にはまだ壁があり、デジタル化には時間を要する状況にあります。
デザイン刷新のプロジェクト案
具体的な改善の糸口として浮上したのが、現在使用されているExcel製リーフレットのデザイン刷新です。「もっとおしゃれにしたい」という圓城寺センター長の想いに対し、秋山は「デザインを得意とするプロボノワーカーにブラッシュアップしてもらうのは、まさにGRANTの得意分野」と、解決策を提案しました。
GRANTによるオンライン相談
子どもたちの創造性を育む企画において、「風船に願い事を書いて飛ばす」というアイデアが生まれましたが、イベント実施に伴う法的・安全面での手続きや許可申請のノウハウに不安を感じる場面がありました。このような具体的な課題に対し、GRANTを通じて、オンライン上の専門家から直接アドバイスを受けられる「オンライン相談」の可能性が注目されました。
GRANTの特徴は、複雑な課題を小さな単位に分解し、短期間(おおむね1ヶ月)で完結可能なプロジェクトとして募集する点にあります。これによりスキルを持つボランティアが参加しやすくなり、同時に市民活動団体の運営負担を軽減することができます。専門的知識や技術を持つ市民が、気軽に社会貢献できる新たなプラットフォームとして、地域活動の可能性を広げる可能性を秘めています。


今後に向けて
今回の訪問は、地域市民活動の新たな可能性を切り開く、重要な契機となりました。まずは、おぎぽーととして「GRANT」へ登録・活用いただき、その経験を元に市内団体へ紹介していただくことになりました。
市民活動団体への直接的なアプローチに加え、行政職員や地域おこし協力隊など、情報感度の高い層に焦点を当てることで、プロボノという新しい協働の形を効果的に波及させる戦略が浮上しました。これは、デジタル技術と市民活動をつなぐ、革新的なアプローチとして期待されています。
佐賀県CSO推進機構は、県内の中間支援組織と連携し、NPOと多様なスキルを持つ市民との協働を積極的に推進します。この取り組みは、地域社会の課題解決力を高め、新たな社会参画の形を創出する、重要な社会的イノベーションとして位置づけられます。
お問い合わせ

さがボノ
(事務局:交流スペース 彩り)
- 〒849-3131 佐賀県唐津市厳木町厳木1018
- TEL:080-3216-1269
- E-mail:sagabono@gmail.com
- WEB:https://grant.community/sagabono
- Facebook:https://www.facebook.com/Saga.ProBono/